「民泊を始めてみたいけど、何から手をつければいいのか分からない」──そんな方も多いのではないでしょうか。
実は民泊を開業するには、物件選びから許可申請、消防・保健所対応まで、意外と多くの手順があります。
この記事では、20年以上飲食業に携わりながら副業で民泊開業を目指す筆者が、ゼロからでも分かる民泊開業の全手順をやさしく解説します。
民泊とは?旅館業法との違いをまず理解しよう
「民泊」とは、自宅やマンション・戸建ての一部または全部を、旅行者に宿泊施設として貸し出す仕組みのことです。
ホテルや旅館のように大規模な施設を持たなくても、一般の住宅を活用できるのが特徴です。
ただし、誰でも自由に貸せるわけではなく、法律のもとで「営業許可」や「届出」が必要です。
民泊の形態は主に次の3種類があります。
民泊の3つのタイプ(新法民泊・特区民泊・旅館業)
| 区分 | 根拠法 | 営業日数 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| 新法民泊(住宅宿泊事業) | 住宅宿泊事業法 | 年180日まで | 一般住宅で届け出制。180日ルールあり |
| 特区民泊 | 国家戦略特区法 | 制限なし(自治体による) | 大阪市などの特区内限定。自治体認可が必要 |
| 旅館業(簡易宿所など) | 旅館業法 | 制限なし | 設備要件が厳しいが、通年営業可能 |
営業日数制限・許可条件の違い
たとえば「新法民泊」は年間180日までという制限があり、残りの日は貸し出せません。
一方「旅館業(簡易宿所)」の許可を取得すれば、年間365日営業することも可能です。
その分、消防設備・用途地域などの要件が厳しく、開業には準備と知識が欠かせません。
このように、民泊の種類ごとにルールが異なるため、
「自分の物件でどの方式なら許可が取れるか」を最初に見極めることが大切です。
民泊開業の流れ【ゼロからの手順】
ここからは、民泊を始めるための全体の流れを5つのステップで紹介します。
一度全体像を把握しておくと、無駄な作業を減らしスムーズに開業準備が進みます。
① 物件探し
最初に行うのが「どの物件で民泊をするか」を決めることです。
自宅・賃貸・購入物件など選択肢はさまざまですが、重要なのは用途地域と消防要件です。
住宅地でもできる場合と、商業地域でないと許可が下りない場合があります。
② 消防・保健所の確認
旅館業許可を取る場合は、必ず消防設備の設置や避難経路の確認が必要です。
最寄りの消防署に図面を持参し、設置が必要な設備(報知機、誘導灯、消火器など)を確認します。
また、簡易宿所ではトイレ・洗面・浴室の数に関する基準もあるため、保健所にも事前相談を行いましょう。
③ 許可申請
物件が要件を満たしていれば、自治体に旅館業(または住宅宿泊事業)の申請を行います。
書類は多いですが、一つずつ準備すれば大丈夫です。
図面、管理体制、近隣説明書などをまとめて提出します。
④ 設備準備・家具家電の導入
許可後は、宿泊者が快適に過ごせるよう設備を整えます。
ベッド・寝具・家電・アメニティなどの準備のほか、鍵の受け渡し方法(スマートロックやキーボックス)も重要です。
⑤ Airbnbなどで公開
準備が整ったら、Airbnbや楽天トラベルなどに掲載して予約を受け付けます。
写真の質や紹介文で予約率が大きく変わるため、プロカメラマンの撮影を検討しても良いでしょう。
初期費用と必要な資金
民泊開業には、物件取得費やリフォーム費用だけでなく、消防設備や家具家電の購入費など、さまざまな初期費用が発生します。
ここでは一般的な簡易宿所(旅館業許可)を前提に、費用の目安を紹介します。
| 費用項目 | 内容 | 目安金額(円) |
|---|---|---|
| リフォーム・内装工事 | 壁紙・床・水回りの改修など | 80万〜150万 |
| 消防設備 | 煙感知器・誘導灯・消火器など | 20万〜40万 |
| 家具・家電 | ベッド・寝具・冷蔵庫・洗濯機など | 30万〜60万 |
| 備品・アメニティ | タオル・ドライヤー・掃除用品など | 5万〜15万 |
| 登録・申請関係 | 図面・書類作成・行政手数料など | 5万〜10万 |
| 清掃・運営準備 | 初期清掃・清掃業者契約など | 3万〜8万 |
💡合計の目安は 約150万〜250万円前後。
ただし、賃貸で小規模に始める場合は100万円以内で収まることもあります。
補助金・融資制度の活用法
最近では、自治体が観光振興や空き家活用を目的に「民泊・簡易宿所改修補助金」を設けている場合があります。
また、日本政策金融公庫の「観光事業向け融資」や、商工会議所の「小規模事業者持続化補助金」も活用可能です。
初期費用を抑えるためには、補助金を調べることが第一歩です。
「〇〇市 民泊 補助金」などで検索すると、最新情報が見つかります。
よくある失敗と成功のコツ
許可が取れない物件例
民泊の失敗で多いのが、「そもそも許可が取れない物件を契約してしまう」ケースです。
特に注意すべきポイントは以下の3つです。
- 用途地域が「第一種低層住居専用地域」などで、そもそも宿泊業が認められていない
- 消防設備(報知器や誘導灯)の設置が構造的に難しい
- オーナーや管理会社が民泊を禁止している
契約前に、用途地域・消防要件・管理規約を必ず確認しておくことが大切です。
集客に強いエリアの特徴
民泊は「立地」と「差別化」が命です。
駅から徒歩圏・観光地へのアクセスが良い場所はもちろん、
最近では“地方×非日常体験”を打ち出した民泊も人気があります。
また、集客面では次のポイントを意識すると効果的です。
- 写真はプロ並みのクオリティに(Airbnbの公式撮影サービスも活用可能)
- タイトル・説明文に「地域名+特徴」を入れる(例:姫路城徒歩圏の和モダン宿)
- 口コミ対応を迅速に行い、レビュー★4.8以上を維持する
こうした工夫を積み重ねることで、安定した予約率とリピーター獲得につながります。
まとめ
民泊開業は「難しそう」と感じるかもしれませんが、
手順を一つずつ進めれば、誰でも実現可能なビジネスです。
この記事で紹介したように、
- 物件選びと用途地域の確認
- 消防・保健所の相談
- 許可申請と設備準備
- 家具・家電の導入
- Airbnbなどでの集客
この流れを押さえておけば、開業までの道筋がはっきり見えてきます。
次回は、実際に許可申請に必要な「書類の書き方」と「提出のコツ」を詳しく解説します。
あなたの民泊開業が一歩進むよう、ぜひブックマークしてチェックしてください。

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